vol.17 手前味噌、大町の味噌


あなたの家の味噌は何味噌?

実は「信州味噌」は商標だった!

味噌蔵を案内してくれた横川商店の横川仁社長と山口倫子さん
味噌蔵を案内してくれた横川商店の横川仁社長と山口倫子さん

スローフードな世界に憧れて、横浜から信濃大町に引っ越して早2年。

 

信州らしい、信濃大町らしい、風景、味、文化を求めて様々な人と出会う日々を満喫しています。

 

長野に移住したからには、

ぜひ信州味噌について知り隊!そして手作りし隊!

 

ずっとそう思っていたので、凍り餅の師匠らに「味噌こしてみるかい?」と誘われたときは、一も二もなく参加させてもらうことにしました。

早速、その様子をレポートします!

 

と、その前にちょっと味噌のお勉強

簡単に味噌についてまとめました。

横川商店の味噌蔵に眠る年季の入った道具たち
横川商店の味噌蔵に眠る年季の入った道具たち

全国各地に様々な種類がある味噌

主な原材料は大豆と共通しますが、発酵させるパイプ役が違ってきます。

 

発酵に使う麹の違いから、全国の8割を占める「米」味噌、東海地方に多い「豆」味噌、四国・九州地方に多い「麦」味噌と分類できます。

 

味の違いでは甘口、辛口、色の違いでは赤、白、など。麹の種類、作り方、味は各地の風土を反映してバラエティに富んでいます。

 

日本人のソウルフード味噌は、最近では抗酸化作用のある発酵食品として健康効果が期待されてます

香気漂う味噌蔵で熟成の時を待つ大きな味噌樽
香気漂う味噌蔵で熟成の時を待つ大きな味噌樽

そんななかでも全国的に有名な「信州味噌」。「信州味噌」は米味噌の代表的な味噌で、米麹、大豆、塩を原材料とします。

 

長野県味噌工業協同組合連合会によると「信州味噌」の出荷数量は、年間19万トン超でシェア46%・全国1位です。

 

信州は元々味噌づくりが盛んでしたが、大正12年(1923)の関東大震災の際、救援物資として首都圏に送ったところ、味が評判になり普及したのが理由の一つだそう。

 

ところで「信州味噌」は長野県味噌工業協同組合連合会の「団体商標」なんですって! 

私は長野県で作られた味噌は、全部信州味噌かと思っておりました……。

 

名乗るにふさわしい品質があって、はじめて「信州味噌」といえるのですね。

品質とブランド性を守るため、商標が登録されたのは昭和30年。

地域ブランドとしても老舗の「信州味噌」なのです。

昔ながらの道具と発酵方法を守る

信濃大町の「信州味噌」の蔵元へ

麹菌を付けた米を入れ発酵させる道具「麹蓋」
麹菌を付けた米を入れ発酵させる道具「麹蓋」

そんな「信州味噌」の伝統を守り続ける味噌蔵が、信濃大町にありました。商工会議所向かいにある横川商店さんです。

 

こちらは町の酒屋さんでもあり私はよくワインを買いに行くのですが、店の奥にこんな立派な味噌蔵があるのを今まで知りませんでした!

 

店舗の奥の作業場で初めて見たのは「麹蓋(こうじぶた)」。発酵に欠かせない麹菌を繁殖させる道具で、正真正銘の「手造り」の証しなのです。

 

(厳密にいうとこの方法で麹を作らないと「手造り味噌」と名乗れないそうです。厳密に、ですけどね)

60年近く味噌に携わる中村さん
60年近く味噌に携わる中村さん

そうそう、味噌蔵にも杜氏さんがいるんです! 

小谷から来てくれる中村さん。

このニコニコした優しい方が作ってるんだなぁ……。

 

杜氏というと酒蔵が思い浮かびますが、麹を使って発酵させるのは同じ職人技。

味噌蔵に杜氏という名の管理者がいるのも納得です。

 

横川商店でつくる「やまじゅうの味噌」は、

大町産のトドロキワセ(うるち米)を麹にし、

昔ながらの天然塩や、信州の地場産西山大豆を使うこだわり。

成熟度合いにより二年熟成、三年熟成、五年熟成と3種類あります。

 

ところで横川商店の“名物”は味噌だけではありません。

味噌職人であり、店での販売、営業、企画、なんでもゴザレな

看板娘(?)のノン子さんこと山口倫子さん。

美味しい味噌や日本酒、ワインのことを知りたかったら

ぜひお店とノン子さんを訪ねてみてくださいね!

いよいよ手前味噌、作ります!

おいしい味噌の作り方

蒸かした米に麹菌を振るイイトコ探し隊・隊長稲澤
蒸かした米に麹菌を振るイイトコ探し隊・隊長稲澤

いよいよ、イイトコ探し隊も味噌をつくるときが来ました!

 

お邪魔したのは「おおまち味噌づくりの会」。大町市の南端、常盤地区にある作業所で活動しています。

 

大町の主婦らが集まる会で会員は100名ほど。冬の仕込みのシーズンには会員が交互に加工所へ通います。

 

何で冬に仕込むのだろう?と素朴な疑問を横山会長に聞くと

「別に他の季節でも作れるけど、やっぱり雑菌の繁殖しづらい冬がいいのよね」とのこと。

 

作業は寒くて大変かもしれませんが、美味しい味噌のためっ!

私も何日かお邪魔して作らせてもらいました。

(1~3日目)

1、米を洗って一晩浸ける

1日目の午前中に洗い浸しておく。

 

 

 2、米の水を切って蒸かす

2日目の朝に蒸し器で蒸かす。

 

 

3、蒸した米に麹菌をつけ発酵

 米麹の温度調節が命!

 

4、発酵を促す

3日目、温度を少し上げる。



大豆

(3~4日目)

 1、大豆を洗って一晩浸ける

 3日目に大豆を吸水させる。

 

2、大豆を煮る

4日目に倍の大きさになった大豆を、アクを取りながら煮る。

3、大豆をつぶす

熱いうちによくつぶす。好みで少し粒々を残してもよい。

4、大豆を冷ます

熱すぎても冷まし過ぎてもダメ。「やっぱり温度計より人の感覚」とのこと。



米+大豆

(4日目)

5、大豆に米麹と塩を混ぜる

麹+豆の重さ×0.125が塩の適量だという。湯冷ましの水で味噌の硬さを調整する。

6、容器に詰める

空気を出しながら詰める。容器はカビ防止のために35度の焼酎で消毒。

味噌の表面をもう一度消毒して、カビ防止のために和がらしを置く。

 

7、発酵・熟成させる

半日陽が当たる風通しの良い軒下に置く。保存場所によって味は変化する。

 8、できあがり

半年ほど経てば食べられる。2年くらい熟成させると、とてもおいしい。


注目される発酵食品“miso”

世界的モデルをも唸らせる芳醇な味

おおまち味噌作りの会の皆様、ありがとうございました!
おおまち味噌作りの会の皆様、ありがとうございました!

会員さんと一緒に作った味噌。

自宅で数年自然発酵させると、それぞれ違う味になるのだとか。

持ち帰ったのは同じ味噌なのに、各家庭に生きる微生物が加わって風味が違ってくるのは面白いですね。

 

昭和40年代までは家で発酵と熟成を行う味噌を「仕込み味噌」といいごく普通のことだったのですが、今は酵母を殺菌し発酵を止めた味噌が一般的に売られています(酒精や加熱で殺菌していないのは「生」で売られ、酵母は生きています)。

 

さて、手づくりの味噌の気になる保存場所ですが、冷蔵庫やあれば味噌蔵へ。味噌は発酵食品で「生きている」ので、休眠させるために涼しいところに置くのだそうです。

 

実は大町の冷涼な気候は味噌の天然発酵に適した場所みたいです。というのも、大手味噌メーカーのマルコメが、

味噌の熟成に最適な環境を探し辿りついたのが大町市の美麻地区なんです!

 

こちらのマルコメのCMは大町市美麻地区で撮影されたもの。

世界的モデルのミランダ・カーさんがいらっしゃったときは、市内はちょっとした騒動でした(笑)

 詳細はリンク先をご覧いただくとして、最後に美麻でできた味噌の紹介を。

 

ここで熟成されたマルコメの味噌は「美麻高原味噌蔵」という名前で通信販売のみの取扱いで販売されています。

 

ちなみに1樽(約800kg)100万円!

1キロ1250円相当なので、ちょっと高級なお味噌です。大量に買わないと口にできないのが味噌(笑)。いつか口にする機会があったら、またここでレポートいたしますね!!

 

今回は市内の味噌蔵から、手作り味噌、高級味噌まで、味噌尽くしでした。



お世話になった取材先

 

横川商店

住所/大町市大町4136(九日町)

電話/0261・22・0133

http://www.yokokawasyoten.jp/misosyouyu.html

 

おおまち味噌づくりの会

電話/0261・22・8087

味噌づくりに興味がある方は会員以外でも参加可。

お気軽にお電話を。 ※味噌の販売はしておりません。

 

<参考にした本、サイト>

 

『ぶらり信州味噌めぐり』北原広子、中沢定幸/信濃毎日新聞社

 

信州みそラボ

長野県味噌工業協同組合連合会) 

http://www.shinshu-miso.or.jp/

 

美麻高原味噌蔵

(マルコメ)

http://www.marukome.co.jp/miasa/

 

「平成28年6月21日 世界的モデル ミランダ・カーさん

美麻の味噌蔵を訪問」

(大町市公式ウェブサイト)

http://www.city.omachi.nagano.jp/00003000/00001500/00001551/201606p.html