冬の風物詩「お菜漬」体験記


野沢菜漬けの小さな思い出と

見事に失敗した去年の話

水が冷たくて苦行のような去年の様子
水が冷たくて苦行のような去年の様子

あなたは野沢菜を初めて食べた時のこと、覚えていますか? 私ははっきりと覚えています! それは小学生の時に長野へスキーに行ったときのこと。ホテルの朝食で出てきた野沢菜が、初体験でした。サクサクと歯ごたえが良く絶妙なしょっぱさが美味しくて、こんなに素敵な食べ物が長野にあるのか~!と子どもながらに感じたことを、昨日のように思い出します。

 

大人になってからは、自分で作ろうと去年チャレンジしてみました。当時借りていた畑で、近所の人に教わりながら種をまき、生長を楽しみにしながら黄色の大きなプラスチックの樽を買い、野沢菜漬けの素を買い……。準備は万端だったのですが、肝心の野沢菜が大きくならない! 次第に雪の中に埋もれていく野沢菜の小さい奴ら……。

 

しょうがないので小さく短いのを浅漬けにしてみました。が、なんか、違う。不味くないけど、イメージと違う。あの子供の時食べて感動した味を味わいたい!! そんなうっすらとした挫折感だけを残して、去年の冬は終わりました。

 

 

しかし、今年の私は違います。なぜならプロ集団がついているから! その名も「信濃大町お葉漬け隊」の皆さんです!!

 

「信濃大町お葉漬け隊」の正体  

それはプロの漬物屋さん+スーパーサポーター

「信濃大町つけものや」の商品(協力いーずら特産館)
「信濃大町つけものや」の商品(協力いーずら特産館)

「信濃大町お葉漬け隊」とは、毎年11月下旬に大町温泉郷で漬物のイベントを行っている皆さんです。今年で7回目だそうで、市内外の方に人気のイベントです。

 

野沢菜漬けの作り方を指導してくださるのは、プロの漬物屋さんたち。農家の奥様の集まりから始まった「信濃大町つけものや」さんです(以下「つけものや」)。大町市内では知る人ぞ知る「蔵漬」「錦漬け」など、人気商品を作っている団体です。


そのほかNPO法人「ぐるったネットワーク」、大町温泉郷観光協会、JA大北の皆さんなどで「信濃大町お葉漬け隊」をサポートしています。

 

イベント当日の朝。出かけていくと、早速テントの中でワイワイ作業する皆さんの姿が。代表の曽根原叶子さんにお話を伺いながら、私もお菜漬けに挑戦しました。

 

プロから学ぶ野沢菜…もとい、

「お菜洗い」と「お菜漬」体験

これが野沢菜の蕪だ!
これが野沢菜の蕪だ!

信州冬野菜の代表格・野沢菜は、大町市の大町地区では、9月上旬に種をまくと11月下旬に収穫できます。収穫するときには、葉がバラバラにならないように蕪の上ギリギリで切るのがコツだそうです。

 

収穫後、味を浸み込みやすくするため根元に十字に切り込みを入れ、5キロずつ束ねます。イベントはこの下処理済みの野沢菜を選ぶところから始まりました。

 

余談ですが野沢菜に蕪があるのを私は知りませんでした!(恥ずかし~)以前収穫した時、紫と白のグラデーションが綺麗な小さな蕪が出てきたときは、本当に驚きました。

 

そうそう、信州では野沢菜のことを「お菜(おな)」と呼ぶことが多いのです。昔は冬の葉物は貴重で、「お」を付けて大切にしていたのかもしれません。それにならって私も「お菜」と呼ぶことにします。

 

おばちゃんたちとワイワイ

大変なお菜洗いも時を忘れる

ぐるったの鈴木幸佳さん
ぐるったの鈴木幸佳さん

さて、メインのお菜洗い作業です。大量のお菜を深めの水槽で洗うのですが……。あ! あったかい!

大町温泉郷の温泉を使っているので、温かいでしょ」と、教えてくださったのは、イベントを主催しているぐるったネットワークの鈴木幸佳さん。「温泉で洗うと柔らかくなるって言われていますよ」。なるほど、本場の野沢温泉さながら、寒い思いをしないでもいいのかぁ、そして美味しくなるのか。一石二鳥ですね!

 

自宅用に一番小さな単位・5㎏を購入。これが結構重いし、大量です! こんな食べきれるのか、ちょっと心配になり洗っていると「ちゃんと土を落として~」とか、「大雑把すぎるよ!」とか、指導の皆さんが叱咤激励しながらも手伝ってくれました。

茎の中の土もていねいに落とします
茎の中の土もていねいに落とします

他の参加者の皆さんも一緒に洗いながら、自然とおしゃべりに花が咲きます。


実は私、収穫しないけれど食べれば美味しい蕪が気になっていたので、そのことを聞いてみました。「土に蕪を残すのは、土の汚れが葉に付きにくくするためなんですよ」とのこと。こうしてお菜洗いの大変さが身に浸みると、少しでも土が付いていない方が断然いい! と思うようになりました。それに土に残した蕪からは、新しい葉(摘み菜)が雪解けと共に伸びてきて、それがまた柔らかくて美味しいんだとか。

 

寒さが“ごちそう”を生む

憧れの風物詩には知恵がたくさん

2、3時間水を切るのが理想だそうです
2、3時間水を切るのが理想だそうです

お菜は綺麗になったら、隣の水の水槽でもう一度洗います。えー、手が冷たい!! 「お菜が温かいと味が変わっちゃうので、ちゃんと水でも洗ってね」。どんな作業にも理由があるのですね……。

 

でも、なんで“野沢菜は寒くなってから漬けろ”というのか、暖かい時期でもいいぢゃん!って思いません? これも聞いてみましたが「寒くなって霜に3回くらい当たってからだとお菜が柔らかくて美味しいのと、寒い時期に漬けると発酵しすぎないから」。納得! おばちゃんたちはいろんな事、教えてくれます。

 

洗い終わったら15分くらい、水を切るために束ねて立てて置いておきます。この間、つけものやさんの皆さんや参加者の方々と、漬物やお菓子、お茶を囲んでおしゃべり。

「昔はどの家でも冬になると漬けていたけれど、栽培や収穫は手間がかかる。何より重労働だし。だったらみんなで集まって作ったら楽しいのではないか、と思って始めたのよ」と、曽根原さん。なるほど、すごくいいイベントです! 「前からやってみたかったの」という学校で配られたチラシを見て来たというお母さんや、名古屋から来た(!)「去年のも美味しく漬かった」というリピーターの方と、しばしの休憩です。

 

つけものや秘伝(?!)のレシピを公開!  

 郷土の味はこうして受け継がれる

秘伝の調味料をつくる曽根原さん
秘伝の調味料をつくる曽根原さん

ここからいよいよ漬けていくのですが、切り漬本漬で作業が分かれます。初心者には簡単に漬かる切り漬がおすすめとのことで、私はそちらにしました。

 

切り漬は名前の通り、先に切ってから漬けます。お菜の蕪元を少しだけ切り落としお菜をばらし、3cmくらいに刻んで大きめのビニール袋に入れます。

 

そしてビニール袋の中でお菜と調味料をよく混ぜます。この調味料は家庭によって様々で、唐辛子や昆布、煮干し、柿の皮、酒、にんにくなど実にバラエティに富んでいます。つけものやさんの味付けは、お菜5kgに対して、漬け素15g、ざらめ125g、塩150gでした(醤油漬けも選べます)。あとは空気をよく抜きながら口を縛り、水が上がってくる(出てくる)のを待つだけです。

 

一方、ほとんどの人が作っていた本漬は、持参した桶に漬け込んでいきます。お菜を隙間なく2段3段と詰めながら、調味料を振っていきます。この簡単そうに見える作業になかなかコツが必要で、曽根原さんたちが「もっとキュウキュウに詰めて~」と手取り足取り、指導していました。

蕪元を樽に付けて重ねていく
蕪元を樽に付けて重ねていく

この後は切り漬本漬も同じで、お菜の量の3倍の重石(私のなら15kg)を載せます。一晩で水が上がってくるのがベストだそうで、水が出てきたら重石は軽いものに替えます。

 

野沢菜漬の食物繊維の含有率は2.2%と少なく、柔らかいのが特徴なので(※下記参考サイトより。他の日本三大漬物、広島菜漬は2.7%、高菜漬は3.9%と比べると分かりやすいです)こうすることで、つぶさず柔らかい漬物になるそうです。

 

「毎年、親戚に配っていますが、今年はまだか~って連絡が来るんです。みんな楽しみにしてくれてるのよ」と、20㎏も(!)漬けた強者の参加者。夫婦でいらした方は「以前は自宅のお風呂場でやっていたけれど、準備が大変で! また参加したいと思います」と、みんなホクホク顔で帰っていきました。

 

お菜漬の食べごろはいつ?  

自分で漬けると格別の味!

おそろいのエプロンで記念撮影! お世話になりました♪
おそろいのエプロンで記念撮影! お世話になりました♪

気になる食べ頃ですが、「浅漬け」はすぐに食べられます。切り漬は3日ほど、本漬は2~3週間。鮮やかな緑色ですっきりとした味わいが特徴です。

 

そして野沢菜の醍醐味「古漬」。食べごろは少し酸っぱくなったころ。外気が暖かくなってくると乳酸菌や酵母が繁殖し複雑な旨味が引き出され、べっこう色に輝くようになるそうです。「自分のお好みの食べ頃を見つけてくださいね」と曽根原さん。


「酸っぱくなったらチャーハンにするのは定番だけど、サンドイッチの具にするのもおすすめ」だとか。今度やってみよう!っと。

 

保存方法は、常温に置くとやわらかくなりすぎて歯ざわりが変わるので、冷蔵庫など寒いところ(大町市内なら野外や蔵)がおすすめだとか。ただし直射日光には当てては駄目ですよ。キララと呼ばれるカビが発生することがあるそうですが、「糠漬けのようにまめに面倒を見ること」で避けられるそうです。

 

まだ水が上がる前の漬けた直後の切り漬(5kg)
まだ水が上がる前の漬けた直後の切り漬(5kg)

ところで、私の漬けたお菜ですが、待ちきれずに家に帰ってすぐにちょっと味見をしました。ちょっぴり甘くてサクサクで、青臭さがまたおいしい~♪箸が止まらない~♪この味を求めていたんだ! と思いました。数日経つとしっかりとした味になりました。作った当初は5㎏が重く大量に感じましたが、漬かると小さくなるし、毎日食卓にあげていると案外早いうちに食べきってしまいそうな予感でいっぱいです。

 

漬物は自分で漬けて失敗するとうんざりしてしまうけど、一度成功すると楽しいものです! 鈴木さんは「昔からある漬物や味噌などの発酵食品は、今、見直されている健康的な食べ物ですよね。そのレシピと共に背景にある食文化を伝えていく、良い機会になればうれしいです。何より楽しいし! ご家族での参加もお待ちしています」とのこと。


来年、みなさんもいかがですか? 私は10kgの本漬に挑戦したいと思います!


<お世話になった取材先>

信濃大町つけものや

電話090-1869-9441(曽根原さん)

※一緒に漬け物を作る仲間を募集中!

 

「信濃大町お葉漬け隊」事務局

ぐるったネットワーク内)

398-0002 大町市大町 1559番地4

電話026185-0556

 

 

<参考サイト>

全日本漬物協同組合連合会

http://www.tsukemono-japan.org/about_tsukemono/index.html

植物性乳酸菌大学(カゴメ)

http://www.kagome.co.jp/nyusankin/nyusankin-univ/

2015年度のチラシ(表)です
2015年度のチラシ(表)です