「雷鳥の里・大町」と山岳博物館


「雷鳥の里」といえばお菓子?  

大町を連想してもらえないんです

こちらが、ご存知「雷鳥の里」
こちらが、ご存知「雷鳥の里」

地域それぞれに“特徴ある贈り物”ってあると思います。横浜にいた頃、お土産は「ありあけのハーバー」(カステラとマロンクリームの横浜を代表する焼菓子)か「横濱フランセのミルフィユ」(さっくりしたパイ生地とクリームが重なり合う洋菓子)、お中元は「横浜ビール」(地元で愛されるクラフトビール)と決まっていました。隊員が大町に来てからの最初のお中元は「河昌のおざんざ」、そして友達への手土産は「田中屋の雷鳥の里」です。

 

このお菓子、中に雷鳥のイラストのステッカー(?)が入っていて、友人に持っていくと、それが可愛くて人気がありました。そして必ず言われるのは「お菓子は知ってるけど、大町は知らない」でした。くやし~~!! 

山岳博物館の前庭に咲くコマクサ
山岳博物館の前庭に咲くコマクサ

この悔しさをばねに、少しでも信濃大町を知ってもらうべく“おおまちイイトコ探し隊”は日々努力していきます!

 

さて、前置きが長くなりましたが、そのお菓子に代表される(?)雷鳥関連で、ビッグなローカルニュースが飛び込んできました。大町の山岳博物館で、ライチョウの飼育を再開するとのこと。再開というと昔飼っていたのかな? 未だライチョウを見たことない隊員は、知らないことだらけです。

ライチョウってどんな鳥?  

ニホンライチョウとスバールバルの違い

動かないので撮りやすい展示のニホンライチョウ
動かないので撮りやすい展示のニホンライチョウ

そもそもライチョウとはどんな鳥なのでしょうか。参考書を基にまとめてみました。

 

ライチョウは、北半球に生育するキジに近い種類のライチョウ科の鳥です(諸説あり)。ピレネー山脈やアルプス山脈などに分布し、厳しい寒さを好みます。私は飛ばないイメージを持っていたのですが、普通にパタパタ飛ぶんだそうです。

 

ニホンライチョウは日本固有亜種で、最も南に生息する種類です。はるか昔の氷河期に北半球にいたライチョウが南下し、そのまま日本の高山地帯に残った“生きる氷河期の遺産”とも言えるんだとか。なかなか壮大な歴史を持った鳥ですねぇ。

山博の企画展で紹介されていたライチョウ料理
山博の企画展で紹介されていたライチョウ料理

現在は国の特別記念物で絶滅危惧種としてレッドリスト入りしています。1980年代には国内に3000羽いたとされますが、今は2000羽以下に減ってきているそうです。中部山岳地帯に生息し、長野県、岐阜県、富山県の「県鳥」、そして大町市の「市の鳥」でもあります。

 

一方、今回飼育することになったスバールバルライチョウニホンライチョウの亜種で、親戚みたいな感じです。学術的な細かな分類は異なっても、ニホンライチョウスバールバルライチョウは見た目や飼育環境など類似点が多いそうです。

 

余談ですが、ニホンライチョウは日本では昔から山岳信仰の山に棲む「神の使者」として神聖視されていたとか。ところがスバールバルライチョウは、ヨーロッパで(期間限定で)狩猟の対象になっており、食用だったりします!  

“スバールバル”という、ちょっと言いにくい名前はノルウェーの地名です。現地でライチョウを食べたという奇特な(?)市の職員に話を聞いたところ「独特の臭みがあって、まさにジビエっぽい」とのことでした。

どうして大町で飼育するんだろう?

 山博とライチョウ飼育の歴史

新ライチョウ舎の前で、見学者に説明する千葉さん
新ライチョウ舎の前で、見学者に説明する千葉さん

さてさて、いよいよ大町山岳博物館で平成27年7月4日(土)から、スバールバルライチョウのオス3羽の一般公開が始まりました。

「山岳博物館では昭和38年から約40年間、ニホンライチョウの低地(大町でも低地!)飼育を手がけていたんですよ」と話して下さったのは、学芸員の千葉悟志さん。大町山岳博物館、通称“さんぱく”は国内でニホンライチョウを、長期にわたって飼育していた唯一の施設なんですって!(何にも知らなくてごめんなさい…)

 

博物館ができたのは昭和26年。地元の公民館青年部の文化活動と、活動に賛同した市民の支援により創設されました。当時は繊維工場の講堂を改造した建物が展示室だったとか(その後、高校の校舎を移築して現在の場所になりました)。小さな博物館ではありましたが北アルプスに近い施設として植物はもちろん、ライチョウやカモシカなどの高山動物も守るべき対象でした。

昭和20年代の山博(大町市民俗資料館より)
昭和20年代の山博(大町市民俗資料館より)

そんな中、昭和36年にニホンライチョウの保護のための基礎調査が、北アルプスで行われることになりました。日本初の本格的な調査であり、山岳博物館のライチョウ研究の始まりでもありました。

 

昭和38年、爺ヶ岳から採取した卵を人工ふ化させ、その後40年間、低地での難しい飼育を続けました。ライチョウのカップリングから飼料の改善、冷房機を備えた人工気候室の設置など、何もかもが初めてのこと。試行錯誤を繰り返しましたが、平成16年に最後の一羽が死んでしまい、山博での飼育は途絶えてしまいました。

なかなか上手に撮れないライチョウ君
なかなか上手に撮れないライチョウ君

その後も飼育再開の道を模索していたところ近年、上野動物園(東京都)などの活動により国家プロジェクトとして保護増殖事業が始まりました。

 

山博も過去の実績からスバールバルライチョウを飼育できることになりました。「スバールバルライチョウの飼育技術を確立し、早期にこの国家プロジェクトに貢献できるよう、ニホンライチョウを山博に呼び戻したいと思っています」と千葉さん。

 

時期は未定ですが、いつかスバールバルライチョウニホンライチョウが並んで飼育される日が来るのが楽しみです!


初めて見るキュートなライチョウ  

山博には他にも見どころ盛りだくさん

展示の夏のライチョウ
展示の夏のライチョウ

さて、そのスバールバルライチョウですが、山岳博物館の隣にある「付属園」の一等地にいます。すぐに目に飛び込む真新しい飼育施設に3羽、スバールバルライチョウのオスがそれぞれ別の小屋にいます。

 

私が見に行ったときはまだ冬の毛で白くてフワフワしていました。毛づくろいする姿は白い毬のようで、愛らしかったです。日中私が見たときはあまり動かなかったですが、いつもは活発的だそうです。

 

ライチョウの学名「ラゴプス ムタ(Lagopus muta)」はギリシャ語で「だんまりのウサギ(の足)」の意味だそうで、由来は足がウサギのように毛で覆われているから。ということで、動くのを待っていると、ほんとだ! つま先まで羽に覆われています。たまに「ガガーガガー」とそんなに可愛くない声で鳴いていました。餌は草食なのでウサギ用のペレットや青菜です。

今日のニホンカモシカの「さつき」ちゃんは、近づいても大丈夫
ニホンカモシカの「さつき」ちゃん

ちなみにこの付属園には他にも動物(傷病鳥獣)がいて、トビやタヌキ、キツネ、フクロウなど約10種が無料で見られます。

 

私が一番気に入ったのは市のキャラクター「おおまぴょん」のモデルになったニホンカモシカ(特別天然記念物)。こいつは何と牛の仲間なんですって! 胃が4つあるのと角が生え変わらないのが特徴。付属園は大人になっても発見のある楽しいところでした。

 

懐かしい人はもう一度“さんぱく”  

初めての人には大町を知る良いきっかけに!

学芸員の千葉さん、お世話になりました!!
学芸員の千葉さん、お世話になりました!!

 実は10代の頃、父親に連れられて山博に来たことがある私。そのことを千葉さんにお話しすると「登山ブームの世代は、山博に特別な思いがある方が多いようです。今年4月にリニューアルしたので、あの展示はどこにある? など昔を懐かしむ中高年の姿も見かけますよ」とのこと。まさしく私も同じで、昔展示で見た木のスキー板を1階で発見した時は「おぉ! これ前に見た!」と懐かしく思いました。

 

何度か訪問したことのある地元の方は、自分の想像する昔の山博とのギャップが面白いでしょう。初めての方は北アルプス周辺を観光する前に見ておくと、理解が深まること間違いなしです! 

 

日本では8か所でしか飼育していないスバールバルライチョウたち。こんな近くに施設があるなんて、大町の皆さん、ラッキーです。そうだ、「雷鳥の里」をあげた友達に、今度こそ大町のイメージを持ってもらうために山博に連れて来よう! 

イイトコ探し隊の楽しい任務が、また一つ増えました。


<お世話になった取材先>

市立大町山岳博物館

http://www.omachi-sanpaku.com/

住所/長野県大町市大町8056-1

電話/0261220211

開館時間/9時〜17時(最終入館1630分)

休館日/月曜日、祝日の翌日、年末年始

(月曜が祝日の場合は翌日に休館)

入館料/小・中学生200円、高校生300円、大人400

 

<参考にした本>

「ライチョウ 生活と飼育への挑戦」大町山岳博物館編/信濃毎日新聞社

「まぼろしの雷鳥」新田次郎/講談社


             ~おまけの写真~

1階にあるミュージアムカフェ・もるげんろーと
1階にあるミュージアムカフェ・もるげんろーと
1階展示室の私の好きなおじさん
1階展示室の私の好きなおじさん
1階にいる本物並みの迫力があるお猿さん
1階にいる本物並みの迫力があるお猿さん